和包丁は伝統的にすべて鋼(はがね)で作られてきましたが、近年は手入れのしやすさから、ステンレス製の和包丁を目にする機会が増えています。とくに、日本の鋼の包丁に慣れていない海外の方にはその傾向があり、欧米の方も、私たちタイ人も、ステンレスのほうになじみがあることが多いのです。今日は包丁に使われるステンレスについて、主な2種類、VG10とMV(Molybdenum Vanadium=モリブデンバナジウム)を取り上げます
VG10(V金10号、V-Kin-10とも呼ばれます)は、調理用として開発された鋼材です。武生特殊鋼材が製造しており、所在地は武生(Takefu)、福井県(Fukui)です。成分はC 1%、Cr 15%、Mo 1%、V 0.2%、Co 1.5%です。使い勝手の面では、VG10は研ぎやすく、よく切れ、切れ味の持ちもよい鋼材です。VG10はVG1とどれくらい違うのか、というご質問もいただきます。VG1のほうがよく切れて研ぎやすい一方、ニッケルとモリブデンの配合が少ないため耐久性は劣り、研ぐ回数が増える、と言えるでしょう。そのため包丁にはVG10が多く使われています。さまざまな面から見て、そのほうが価値が高いからです。
MV(Molybdenum Vanadium) は、鋼にモリブデンとバナジウムを加えたもので、さびがきわめて発生しにくくなっています。切れ味が長持ちし、さびにも非常に強いため、荒い使い方にも向いています。このステンレスの欠点は、かなり硬いため研ぎにくいことです。
よき協力先である藤次郎(Tojiro)には、VG10とMVの両方があります。切れ味がよく、飲食店での使用に耐える丈夫さがあり、そして何より研ぎやすく、研ぐ人の熟練をあまり必要としません。大手の飲食チェーンが藤次郎を好んで使うのは、担当者個人の技量に頼りすぎずに済むからです。価格に見合った良い切れ味が得られる点も魅力です。